「とりあえず行ってみよう!と思えるような子たちに。」タカ塾代表/中川 貴士さん

タカ塾について~

不登校・引きこもり・発達障害専門の完全個別の学習塾でありながら、学力向上だけでなく社会的自立を目指す。 学校復帰、学習の学び直し、高卒認定、進学、就職、自立訓練 、事業所・就労移行支援事業所への通所など、一人一人の目標にフルコミットしたプログラムを提供。オンライン授業や訪問授業にも対応。カフェも経営しており、希望生徒はカフェ業務も体験することもできる。

自社経営の「Cafe Cross」にて

いろんなできたを感じてほしい

木下

タカ塾の事業は、現役の高校教員としてお仕事をされる中で芽生えた課題感を原点に始まったとのことですが具体的にお聞きしてもいいですか?

中川さん

学校の環境、枠に合わなかった子たちって、学校に来なくなったり辞めてしまったりすると全然居場所がないんですよね。

中川さん

そこからアルバイトしてみよう、働いてみようっていう気になるかな?いやならん。でも学校で出来ることも限界がある。すごく生きづらいんじゃないかなって。

木下

そうですよね・・・積極的に外との交流を求められる方ばかりではないでしょう。

中川さん

個人で何ができるんだろう、というところから始まりましたね。

中川さん

僕は当事者じゃないからわかんない。わかんないけど、わかろうとすることはできるじゃないですか。その子たちが何がきつくて、心の底から共感はできんけど、何がどうきつい、っていうところは自分で勉強したりとか、いろんな経験をすることで知ろうとするっていうのは全然できるじゃないですか。その姿勢は当事者じゃなくても持つべきだなあと思って僕はやってます。

木下

(全支援者に届いてほしい・・・😭)

木下

ちなみに具体的にはどんなサポートをされているのでしょうか?

中川さん

そうですね、今その子が必要としてることって一人一人違うので、その子が必要としてることをうちがサポートできるかっていう視点で関わらせていただいています。

中川さん

本人がどうにかしたい、もっとこの力を伸ばしたいっていうのに対して、うちとしてサポートできる範囲でメニューをご提案するって形で。特段年齢で区切ったりはしてないです。

中川さん

真ん中には、とにかく彼らに心豊かな人生を歩んでほしいっていう思いがあって、そのためにはまず自信だったり成功体験だったりが必要だと僕は思ってます。例えば家から出れないケースであれば、じゃあそのスタートラインからどういったできたを積み上げていくのかっていう視点で色々投げかけてみたりしますね。

中川さん

家から全然出てないってことだったら、まずちょっと玄関の外まで行ってみるのでもいいし、バスに乗るでもいいし、先生とどこかカフェでお茶でもするでもいい。「自分ってできるやん!」っていう感覚をつかんでもらうというのが山のてっぺんとしてあって、そこへの上り方は色々あるかなと思うので、とにかくいろんなボールを投げかけています。

木下

とても素敵な考え方ですね・・・・

ほんとはうちみたいなところは需要があってはいけない

木下

実際にタカ塾にご相談に来られるのはどんな方なんでしょうか。

中川さん

タカ塾に来る生徒さんは、「あそこも行ってみた、試してみた、調べた、でもちょっと合わんかった。

どうにかこうにかタカ塾でお願いできないですかね。」っていう形で来られる方も多くて。

すごくいろんなことを試されて来られているんですよね。

中川さん

ウキウキで来る子なんていないですよ。ほんとに悲壮感というか。どこもうまくいかんやった、とか、勉強せないかんのは分かっとるけどどこから始めたらいいかわかんない、っていう形で来る。

中川さん

ほんとはうちみたいなところは需要があってはいけないんです。

1問ミスしてしまったと捉えるか、9問はしっかり正解できたと捉えるか

木下

自分ってできるやん!という感覚をつかんでほしいと仰っていましたが、自己肯定感をはぐくむのってすごく難しいですよね。

中川さん

んー、成功体験や自信は、要は見る側の視点なんですよ。目の前で起こってる事象っていうのは変わんないんです。

木下

もう少し具体的にうかがってもよろしいでしょうか…?

中川さん

テストを例に挙げると、10問中9問っていうのを1問ミスしたって捉えるのか9問はしっかり正解できたって捉えるのか。10分の9っていう点数(事実)は変わんないんですけど、それを見る側がどう見るかっていう問題だと思うんです。

中川さん

「9点取れるくらい頑張ったんやね!」って捉えるか、「なんで満点取れんやったん、前もやったやろ」って捉えるかで声かけも変わってくる。そういった具合で、「見方を変えていく」っていうのはすごく意識をしていますね

木下

期待するあまり後者になりがちっていうの、ありそうです。

中川さん

僕は、「自分は9点分やったもんな!」って思ってほしい。事実、がんばったから取れた点数だと思います。

表面的な部分のみ見て判断せず、「もしかしてこうやって頑張ってくれてたのかな」っていうところを想像するっていうか、思いを汲み取る姿勢、こちらが彼らを肯定的に分かろうとする姿勢はすごく必要なのかなと思いました。

行ったことないけどとりあえず行ってみよう!と思えるような子たちに

木下

活動される中で見えてきた課題感などあればぜひ教えてください!

中川さん

実は進路に悩む生徒さんたちも保護者の方々も、「生きていけるかな」っていう心配がすごくある中で進路を選択する局面に立たされてる場合もあって。

中3、高3と進路選択の局面で、大きく言うと進学か就職かというところにはなるんですけど、やっぱり進学を選ぶっていう生徒さんが多くて、その選び方が僕としては気になる。

木下

というと・・・?

中川さん

消極的な選択として進学を選んでる。

自分が今から働くのは難しい、「4月から就職」はやっていけない、っていう思いが本人の中にある。でもなんもせんってわけにはいかんけんとりあえず進学するか、って形で。「進学先でこんなことやあんなことを学びたい」っていうわけではなくて、「どっちにしようかな。やりたいことないし進学もどうなんかな、じゃあ就職かな?いや月から金で働くとか無理やろ。じゃあ一旦学校行っとくか。」みたいな形で選んでるような気がしてます。

木下

往々にしてこういう選択をしている学生さんは多そうですよね。

中川さん

あと、時間がない。時間が足りない。

もっとじっくり、もっと丁寧にやっていくのがベストなのはわかってるけど「卒業」という時間的な制約に縛られたところでの教育活動になるので、難しいですね。

「卒業したらどこかしら行かないといけない」っていうマインドがあるから、すっとばした目標を立ててしまう。

中川さん

別に自分のタイミングで高校とか入ればいいやん?って思えるのであればいいんですけど、どうしても周りの人たちの様子も見えちゃったりする中で焦る部分もあるのかな、と。

中川さん

僕としては、そういうの取っ払って、「いやいいやん?2年かかってもいいやん?今やってることをしっかり継続していけばあなたが最終的な目標に掲げてるところには行けるよ」っていう風に伝えたいんですけど、やっぱりそこは生徒さんもパリッと3年で卒業して次は高校3年生!大学1年生!みたいな方がよかったりするので・・・

中川さん

王道ルートみたいな。その固定概念を何とか変えていけると生徒さんも楽だし、その様子を見てる保護者さんも楽なのにな、とは思いますね。

木下

(他人と比べて焦っちゃうのめちゃめちゃわかる・・・)

中川さん

でも正直、いろんな世界を見るのも一点集中で見るのも、それはその子の人生なのでいいと思うんです。本人が「3年生」に目標を定めて今の日本の枠の中で生きていくことを選んでいるのであればそれはそれでいいと思う。そのかわり、自分の意思で選択をしてほしいという思いがすごくあります。進路を選ぶときに、「あそこ行ってみようかな、ここ行ってみようかな」とか、まず目を向けられる状態になってほしい。

中川さん

「自分にはここしかない」じゃなくて、「ここも行ってみたらおもろいのかな、でも俺はここに決めた!」っていう感じで、自分の意志で選択できる状態に生徒さんたちを持っていきたいなと思っていて、その選択が少なかろうが多かろうが、視野が狭かろうが広かろうが、その子がいいのであればいいと思うんですよね。

木下

なるほど。

中川さん

その一歩を踏み出すためにも、やってみようかなと思える自信が大事だと思っていて。

今やってる勉強ももしかしたら生徒さんにとっては直接的には役に立たんことかもしれんけど、ここまで頑張ってきたっていう事実は残ってるし、これは絶対どこかで活きてくるよ、っていうようなスタンスで関わっています。

中川さん

今やってる過程をちゃんと残してあげて、ちゃんと彼らの自信につなげて。

英語勉強したけどあんま使わんかったね、かもしれんけど、「ようよう考えたら俺1年間結構やったな」っていうのを残してあげて。

それってずっと彼らの心の中に残ると思うんです。

それがあれば、なんかやりたいと思えた時に一歩踏み出せたりするのかなとも思うので。

木下

自信と、自分を信じてあげる勇気ですよね。

中川さん

とにかく、「これやりたいな、あれやりたいな、あそこに行ってみたいな、興味あるな」に一歩踏み出せるのがすごく大事だと思ってます。行ったことないけどとりあえず行ってみよう!と思えるような子たちになってもらいたい。

中川さん

自分の価値観を大事にして、行ってみた先で知らないものに触れて、知らない体験をして、「こんなことあるんや!」「こんなことしてる人いるんや!」「じゃあ自分は次こんなことやってみようかな」「あっちの方に行ってみようかなあ」っていう形で、自分の価値観を大事にしつつ自分の人生を自分の足で切り開いていってもらいたい。そういう子たちになってほしい。

中川さん

最初の一歩ってどうしても不安があると思うんです。できるかなって。でも今までうちでやってきたことが土台になって、「いやできる。やってみよう。」って思えるような子たちに育ってほしいなって。そこはありますね。

(編集後記)

今回中川さんからお話を伺う中で、目の前の生徒さんへのひたむきさと誠実さを感じました。
近すぎるからこそ焦ってしまったり、急かしてしまったりすることはごく自然なことであるように思いますが、だからこそ

このような外部機関の力も借りて、肩の荷を下ろしてみるのはいかがでしょうか…?

中川さんはきっと、ご家族とご本人のどちらも冷静に俯瞰してくださることと思います。
落ち着きと教育に対する情熱をどちらも兼ね備えていらっしゃる方です。

この記事を書いた人

木下瑞貴

NPO法人スマイリーフラワーズ教育事業部スタッフ。
学生時代より「子どものサードプレイス作り」をテーマとして活動。子どもを支えるだけでなく社会も同時に変革させていきたい、子どもの問題に関心を持ってくださる人を増やしたいという思いのもと、発信活動にも力を入れております。本ページでは、子どもに関係する団体についてストーリーを掲載することで、社会の皆様に子どもの問題や活動団体をもっと身近に感じていただくことを目的としております。