「親がいないからできなくなる、をなくしてあげたい。」自立援助ホームLEAPホーム長/中嶋亮太さん

3.自分で努力することの重要性

中嶋さん

「職業の選択肢っていうのを増やしていかないといけない」という話をしてきたんですが、おんぶにだっこ状態でどんな選択肢も取れる状態にするのが理想かと言ったらそういうわけではありません

中嶋さん

ホームの利用者さんたちって施設暮らしが長い子とかは特に、いろいろと逆に物質的には恵まれてたりするんですよね😅

中嶋さん

もちろんその親御さんとの関係が無かったりだとか、愛着のところとかで埋めたくても埋められないものもあるんですけど、生活環境の中ではいろんな制度も整ってきてますし、大学に行くことも十分可能です👩‍🎓

木下

制度下にあるので受けられる実際恩恵も大きいですよね・・・同じような状況にあっても、制度の狭間にあって恩恵を受けられない人もいますし🤧

中嶋さん

そうそう。

中嶋さん

むしろ、一般家庭だったらこんなこと出来ないよ、ってことが施設の中では出来たりするっていうこともあるので、選択肢を広げるばかりじゃなくて、自分で努力することの重要性っていうのも彼らにもっと伝えていかないといけません。

中嶋さん

ホームでも、例えば何か物を探す時、自分で探さずにすぐ聞いちゃう子が多いっていうような。どうしたらいい?っていうシーンですぐ答えが来ちゃうんです😅

中嶋さん

で、答えが得られないと待てなくてイライラする、っていうような構図がよく見られるんですね💧

4.卒園後、「帰る場所」がなくなる利用者たち

木下

いろんなものを享受できる反面、ホームを出た後に頼れる場所や存在はいないわけじゃないですか。

木下

うつ病になった時、将来を見つめ直したいなど一度立ち止まる期間が欲しくても彼らにはそれが許されないわけですよね💭

木下

一回実家に戻って羽を伸ばす、ということが出来ない。それってとても大きなことだと思うんですが・・・😥

中嶋さん

ほんとの自立援助ホームの課題ってそこなのかなと思っていて。

中嶋さん

「いつでも帰っておいでね」とは言うけれども、現実問題、6人定員のホームに卒園した利用者を受け入れる余裕があるかというと・・・

中嶋さん

ほんとの実家のようにこう、一度いろんなものを手放して0からリセットしてやり直したい時、「じゃあうちに帰っておいで」っていえる環境がまだ無いっていうのが現状です。

中嶋さん

やっぱり、いざとなったらっていう保証がある中で頑張るのと、もうここを踏み外したら後がないと思って頑張るのとでは、どうしても精神的な負担が違う

※寮付きの仕事などに送り出した後、退職して行き場がなくなってしまうというケースに備え、中嶋さんの法人では「ステップハウス」という部屋を用意している。
あくまで立て直しまで一時的に滞在でき、一人暮らしと同じような生活環境で再就職を目指していく。
中嶋さん

全国自立援助ホーム協議会で謳われている方針としても、1.安心安全の場の提供、2.主体性の保証、そして3.アフターケアとあります。

※5「アフターケア」・・・”児童養護施設を退所した者へのさまざまな援助や関わりを指す。”749.pdf (boshiaiikukai.jp)  
“施設を退所した子供たちは家庭からの援助が全く受けられないばかりか、低学歴・過去のトラウマが起因するコミュニケーション能力の欠如等から生活が破綻してしまうケースが後を絶たない。退所者が若年ホームレスになったり、犯罪をしたり、自殺をしたりする確率は一般家庭出身の子どもたちよりはるかに高いことは、今あらゆる機関の調査研究で明らかにされている。”児童養護施設等退所者のアフターケア支援の取り組み (syaanken.or.jp)
中嶋さん

「退所後が本当の支援」って言われるくらいアフターケアが大事なんです。

中嶋さん

ただ、彼らが安定して生活できるまで関わっていけるようにする上では、何よりマンパワー(人員)が足りてなくて💧

中嶋さん

国や行政の方もそこに理解を示していただいてきてはいて、例えば「自立支援担当職員」っていう名前でアフターケアを専門で行う職員を置くことが出来るようになり、そこに対してお金が付くような制度も新たにできました💰

中嶋さん

ただ、その制度利用もまだ限定的な使い方しかできないので、それとは別にホームのマンパワーの底上げとして、最低配置基準を上げてもらいたいですね・・・💭

中嶋さん

今はひとつのホームにつき1人体制が基本ですが、少なくとも2人で回せるような環境が望まれます。例えば、卒園生の相談があった時に一人は駆け付けられるような、「動ける体制」を維持することでアフターケアにももっと力を入れられると思います。

5.地域社会との共生

地域行事に参加
木下

先程の畳屋さん、お寿司屋さんの例ってまさに地域とのつながりの中から生まれた雇用機会だと思うんですが、こういったモデルには地域の方々のご協力というのが必須になると思います。

木下

ご協力いただくにあたって、中嶋さんをはじめとしたスタッフの方々から、社会的養護、あるいは自立援助ホームとは何かといったことからお話しされると思うんですが、地域の方々の(最初の)反応ってどんな感じだったか気になりました🧐

中嶋さん

地域の反応・・・これはリープ設立時の話になりますが。

木下

ええ。

中嶋さん

法人として、地域とのつながり・関わりを大事にしてるので、新規開設の場合は「こういうホームを建てますよ」という旨を地域説明会を開いて地域の方々にお伝えするんですね💬

中嶋さん

7月がリープの開設予定月だったので、6月に入って説明会を開催したんですけど、想像以上にたくさんの方に来ていただきまして。

木下

そうなんですね😲(意外・・・!)

中嶋さん

いわゆる「自立準備ホーム」のように、少年院を出た子どもたちの更生のために受け入れる施設だという噂が広まっていて・・・危険な子が住む場所っていう認識を持たれていたっていうのがひとつきっかけでもあったんですけど😅

木下

(そっちかあ・・・)

中嶋さん

後期高齢者の世帯が多いこともあり、「せっかくここで穏やかに暮らしていたのに青天の霹靂だ」と言われたり、「いつ後ろから背中を刺されるか分からないから安心して暮らせない」と言われたり。

木下

(悲しい・・・😭)

中嶋さん

当初予定していた地域説明会では、数多くのご質問にお答えしている間に時間が過ぎてしまって・・・。県の児童家庭課の方にも同席していただいたんですけど、やっぱり地域の方がこれだけ心配されている状況の中でホーム運営をそのまま始めるというのは難しいということで、開設は延期になりました。

ボランティアさん作
中嶋さん

そして、2回目の地域説明会および個別の説明会を開く中で、地域の方々から肯定的な意見もあがり始めました。

木下

(お・・・!✨)

中嶋さん

リープのある筑紫野市子ども支援に力をいれている市でもあるので、「筑紫野市民が『子どもを育てていこう』という施設を反対するというのはどうなのか」、という意見があがった一方、やはりホームの近隣の方からは、 「そうは言ってもあなた方は家が遠いからそんなこと言えるんだ、わたしたちは怖くてたまらない」とかそういう話が最初はあがっていました。

木下

うーん、認識を変えていくのってなかなか難しいことですよね・・・😔

木下

3年間の間で地域の方々に何か変化はありましたか・・・?💭

中嶋さん

今では利用者が通ると声をかけてくださったりだとか、「一人暮らしする子おるんやったらこの電子レンジ使わんかね」ってくださったり。それこそ、「今若い働き手が欲しくて、うちでちょっと働きたいっていう子はおらんかね」みたいな声をかけていただいたりだとか🙏

木下

すごい変化ですね・・・!😲✨(よかった・・・)

木下

何がそこまでの変化を生んだのでしょう・・・?💭

中嶋さん

地域社会の中で生きていくという意識を利用者にも持ってもらいたいということで、ごみ捨てに関してもただ捨てるのではなくて、地域で決められたルールがあるということを伝えたり、

中嶋さん

音についても日頃から地域の人にご迷惑をおかけしているので、顔を合わせたら挨拶はするようにとかそういうことを伝えてきました💬

中嶋さん

これは、彼らにとっても大切なことだと思うんですよね。

中嶋さん

いずれ利用者たちがホームを離れても一人で生きていくことはできないわけで、どこかしらの地域コミュニティに属していくことになるので。

木下

そうですよね・・・😳

中嶋さん

地域の中に根付いていると(先述の通り)周りのいろんな方に協力していただけたり、これって利用者さんが生活していくうえで大きな支えとなってくるわけです。

木下

ええ、そうですよね。

地域行事への参加
中嶋さん

なので、この延長で、利用者である「子どもたち」の自立に向けた仕事に繋いでいきたいなと思う反面、難しさもあります。

木下

なんでしょう・・・?😳

中嶋さん

(そもそも)難しい年代の子たちなので、例えばアルバイト先で遅刻をしたり無断欠勤をしたり、急に仕事を辞めたりだとか。あるいは、ひとりで働くのが不安な子が2、3人に声をかけて一緒に働いて、でみんな一緒に辞めたりとか。

中嶋さん

そういうことがあって、あるお店からは「もうリープの名前を聞いたら雇わない」って言われてしまいました。

木下

ある施設の子、としてひとくくりに見られてしまう故ですね・・・💦